
EMCコーポレーションの取締役副社長(VP)兼グローバル・マーケティング担当最高技術責任者(CTO)であるチャック・ホリスのブログをご紹介します。
最近増えてきている現象についてお話しします。
大企業のお客様やEMCのパートナーの元へ出向いて、プライベート・クラウドに関するプレゼンテーションを行うときのことです。
完全に仮想化された環境や新しい運用モデルについて、さらにVMware、Cisco、およびEMCがどのように連携してこの取り組みを促進しているかについて話をします。
そうすると、非常に面白いことが起こるのです―最近ではますます頻繁に。
通常、このような大局的な話をすると、聞き手は想定内の反応を返します。
そのテクノロジーが現実的かどうかを探る方がいます。他に同じようなことに取り組んでいる企業はどこなのか訊かれることもあります。他のベンダーの取り組みとの対比や比較について説明するように求められることもあれば、チームの他のメンバーも交えたフォローアップ・セッションを開いて、さまざまな点について理解を深めたいと望まれることもあります。
テクノロジーの方向性が議題になっている場合には、このような反応はすべて「良い」反応だと言えます。また、非常によくある反応でもあります。
ただし、時々、まったく異なる反応を返されることがあります。最初にそのような反応を返されたとき、私は不意を突かれました。しかし、それから何度も同じことを経験した結果、これはもうひとつの傾向と言ってもいいと考えています。
端的に言って、CIOが通常のプロセスと運用モデルを省きたいと考えているのです。
そして、このような反応が増えてきている理由からは、最近のITに関する考え方について多くのことがわかります。
お客様側の上級IT担当者数人と会議室に座っています。役員の方が次のような質問をします。「どれくらい短期間で、それをわが社に導入できますか?」
お客様側の他の参加者やベンダー側の人間は目を見開きます。
価格設定や使用事例に関するディスカッションは行われません。「いつものプロセスでやってみましょう」式の発想は一切ありません。ただ、単純で率直な質問があるのみです。
一体何が起こっているのでしょう? 一度原因を解き明かせば納得が行くはずです。
大規模なIT組織には、必ず「満たされていない要求」を抱えるグループがいます。このグループのメンバーは、必要としているものをITから簡単に得ることができません。
このようなユーザー・グループが、外部のクラウド・サービスを使用する確率が最も高いのです―たとえITがそれを承認しようとしなかろうと。ITがよりクラウド寄りのアプローチをとるように主張し、役員会に苦情を申し立てるのは彼らです。
組織によって、彼らは研究開発や技術計算に携わる従業員である場合もあれば、アプリケーション開発者の場合もあります。経営分析を行っているアナリストの場合もあるでしょう。VDIエクスペリエンスがもたらす生産性の向上を求める、非常に発言力が強いパワー・ユーザーの集団である可能性もあります。
標準的なITプロシージャやアーキテクチャでは、このようなグループの要求は満たされません。彼らの要求を満たすことができないと、ITは重要なユーザー層をコントロールできなくなります。
実際、名の通った企業で、アマゾンをはじめとする外部のクラウド・サービスを利用しているところの数少ない事例を掘り下げてみると、たいていは満たされていない要求を持つユーザー層がいます。
例に挙げたユーザー・グループの話に戻りましょう。たいていのケースでは、彼らは所属している組織に対して、重要な事業価値を生み出す責任を負っています。組織立って行動した場合、彼らはファイアウォールの外に出て自分たちが必要としているものを手に入れるだけの力を十分に備えています。
賢明なITリーダーは、このような内部ユーザー層の要求に応えるための時間が非常に限られていることに気付き始めています。早くしないと、彼らはITのコントロールの及ばないファイアウォールの外部で、必要な技術を見つけてしまいます。新たな頭痛の種になることは間違いありません。
このため、スピードが必要なのです。できる限り早く、何らかの技術を導入して、内部ユーザー・グループに対して進展を見せること。セルフ・サービスとクラウドが前面に出ていること。従来のITワークロードではなく、満たされていない要求に向けて提供すること。
第一に、従来のITの懸念事項である「安定性」、「セキュリティ」、「可用性」、「既存の環境との統合」などは、ここではあまり重要視されない傾向にあります。何であれ、これらのユーザーに差し出せば、現在彼らが手にしている物―平たく言ってゼロですが―よりはずっと良いのです。
第二に、このような状況では、従来のIT導入プロセスは省略したいものです。綿密な技術評価とそれに続くRFI、RFP、ベンダーによる提案の繰り返し、という流れは一切ありません。テクノロジー(およびそれをサポートするベンダー)が比較的主流のものでありさえすれば、すぐにでも実現に移したいのです。
第三に、ITカスタマーは、ベンダー側の担当者が構築と(少なくとも初期)稼働を行ってくれることを必要としています。比較的新しいテクノロジーには、比較的新しい方法が伴うからです。
さらに重要なことに、運用モデルは従来のITワークフローとはまったく異なります。ここで問題になっているのは、エンド・ユーザー用のセルフサービス・ポータルを含む、ほぼゼロ・タッチに近いITプロセスです。このような対応が可能なプロセスを備えているIT組織は多くありません。
さて、十分な時間と人員があれば、たいていのIT組織が上記のことを実現できるのははっきりしています。しかし、「スピードが必要」だから、できる限り早く、「使える」状態に持っていき、後から既存のプロセスやプロシージャを改良することが好まれるのです。
正直なところ、まだ回答を出せる段階には至っていません。このような案件がいくつも動いている最中です。EMCだけでなく、パートナーのVMwareとCiscoにとっても、やや混沌としている上に非常に慌ただしい状態です。無理もないことですが、私たちは皆、従来のIT評価や導入サイクルに慣れていますから。
さまざまなソリューションによる作業の一環として、統合作業や準備作業の大部分がすでに済んでいることは幸運だったと言えると思います。調整が必要な箇所はいくつかありますが、少なくともエンジンをかけるところからスタートするわけではありません。
そうは言っても、この一連の流れもすぐに目新しいものではなくなります。そう遠くないうちに、一定数のIT組織が、この「初めての」(「ベイビー」でも「概念実証」でも構いませんが)プライベート・クラウドを経験し、ユーザーの満たされていない要求の山に向けて提供することで、さまざまな教訓を共有できるようになるでしょう。考えてみれば、これはかなりすごいことです。
個人的には、まったく素晴らしいことだと思います。私たち業界人は、分析が高じて停滞状態に陥ってしまうことが少なくありません。難解な事柄について延々と議論し、せっかくの真っ当な技術的思考を、何十年も続く組織の前例で覆ってしまいます。
先見の明のあるITリーダーが、思い切って行動するのを見るのは気持ちの良いものです。より広い視野に立つと、彼らがどのような経緯で、この前例のない事態に直面することになったかは、それほど重要なことではないのかもしれません。
続報があればお知らせします。
(この記事は、オリジナルのブログでは2009/8/24に公開されています。)
チャック・ホリス (Chuck Hollis)
EMCコーポレーション EMC取締役副社長(VP)兼グローバル・マーケティング担当最高技術責任者(CTO)
チャック・ホリスは顧客や業界関係者を対象にテクノロジーに関する講演を頻繁に行い、エンタープライズIT業界のトップ・ブロガーの1人に数えられています。
英語版のChuck's Blogはこちら → http://chucksblog.emc.com/
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