
横浜市で建設業を営むK社では、主に神奈川県内の工事を請け負っている。新たな工事を発注すると現地に事務所を開設するが、そこに設置したWindowsサーバをファイルサーバとして用い、CAD図面などの設計情報や、進ちょく管理用の画像データなどを保管している。しかし、事務所ごとに専任のIT担当者を置く余裕はないため、サーバの運用やデータのバックアップは現場任せになっており、必ずしも適切に実施されているとはいえない状況であった。
このままでは、ファイルサーバの故障や事務所の火災、ウイルス感染などのアクシデントが発生した際、業務を行う上で重要なデータが失われてしまう可能性がある。仮にそうなってしまった場合、請け負っている工事に悪影響が出ることは必至であり、K社に対する信頼も損なわれてしまうだろう。
考えられる対策としては、各事務所に対し適切なデータ管理を周知、徹底するのが第一だが、あいにく現場の人間にはITに関する知識もスキルもない。かといって、本社のIT部門は少ない人数で業務を切り回すのが精いっぱいであり、スタッフを現場に張り付かせるのはもちろん、巡回させることすら厳しい状況である。
そこでK社では、今まで現場任せにしていたファイルサーバのバックアップを、コストや手間をかけずに本社側からコントロールする仕組みを構築できないか、EMCに相談してみることにした。

K社は、EMCにDR(Disaster Recovery)アセスメント・サービスを依頼した。専門家の知恵を借りて、現場へ負担をかけずに、災害対策の観点からバックアップする仕組みを構築しようと考えたのである。
EMCの提案は、事務所ごとにバックアップの仕組みを構築するのではなく、インターネットのIPネットワーク経由で、事務所のファイルサーバと本社側のバックアップサーバをつなぎ、データ・レプリケーションを行うというものであった。具体的には、各事務所のWindowsサーバにレプリケーションツールを導入し、ブロードバンド回線を使って本社側からリモートでバックアップを行う。これにより、本社で各事務所のデータを集約できるようになるため、バックアップに関するコストや運用の負荷が軽減され、被災時のデータ復旧が容易になる。
システムの構築にあたっては、新たに用意するサーバ/ストレージ機器は本社側のバックアップサーバのみ。あとは各事務所の既存のファイルサーバにツールを導入するだけで済み、事務所ごとにサーバやストレージを用意する必要はない。ネットワークについては、一般的な光ファイバーやADSLを利用するため、導入・運用コストを抑えることができる。通信時のセキュリティ面についても、送信の際のデータは暗号化できるので安心だ。
リモートによるバックアップの仕組みを構築したことで、もしどこかの事務所でトラブルが発生し、重要なファイルを喪失してしまった場合でも、ファイルサーバをオンラインに復帰させるだけで、速やかにデータを復旧でき、工事の進ちょくに大きな影響を与えずに済む。また事務所側からすれば、バックアップという面倒な作業から解放され、工事に専念できるようになった点が大きい。
K社は今回のシステム構築により、さほどコストをかけずに各事務所におけるデータの可用性を向上させ、災害対策を実現することに成功したのであった。