
大阪に本社を置く電子部品メーカーのB社は、企業規模は決して大きくないが、卓越した技術力とユニークな発想を生かし、ある特殊なデバイスの分野において世界市場で5割以上のシェアを占めるリーディング・カンパニーである。
デバイスはある家電製品の中核となるものであり、また販売をワールドワイドに展開しているだけあって、世界中の取引先から、安定供給だけでなく自然災害や事故が発生した際の速やかなる復旧と確実な事業継続が求められていた。特に最近では、海外の投資家をはじめ多くのステークホルダーから、災害対策への取り組み状況について問い合わせが増えたこともあり、より本格的なBCP(事業継続計画)の策定・運用、それに付随したITシステムの体制強化が、経営課題のひとつとして浮上した。
現状、B社ではバックアップはテープメディアを利用して行っているが、復旧時間の時間短縮や可用性の向上を考えると少々心許ない。ステークホルダーの厳しい要求へ応えるには、抜本的な見直しが必要と考えられたのである。

B社ではBCPの策定に向けて、経営トップの陣頭指揮の下、全社的なプロジェクトチームが発足した。IT部門からも何人かのメンバーが参加し、BCPに基づいたITシステムの体制整備について取り組むことになった。
プロジェクトの着手にあたって、B社はEMCのDR(Disaster Recovery)アセスメント・サービスを受けることにした。ITシステムの災害対策は企業の経営戦略とも密接に結び付いている。レプリケーションを行うに際しては、災害対策サイトのシステムのサービス・レベルや導入の手間、運用コストなど検討すべき項目も多岐に及ぶ。B社はDRアセスメント・サービスの結果を参考に、EMCの専門家と徹底的なディスカッションを行うことで、こうした要件を明確化していった。
まずは業務ごとに事業継続の必要性を数値化し、各業務システムのRPO(目標復旧ポイント)とRTO(目標復旧時間)を決定した。RPOとは、障害が発生した際に、どの時点のバックアップから復旧させるのかということであり、仮に12時間前の状態に戻すことになれば、半日分のデータが失われてしまうことになる。RTOは、システムの復旧に必要な時間のことであり、例えば24時間で復旧する場合は、トラブルが発生してからまる1日、ビジネスが止まることになる。金融機関のシステムのように、トランザクション処理を行うケースでは、数秒~数分程度のデータ損失で抑えることが求められる。
一般的な製造業の場合、ここまで厳しい対応が求められることは少ないが、B社は取引先やステークホルダーから一刻も早く復旧できる体制を求められており、そうした要望に対応するためには、データの完全同期を実現できるストレージベースのレプリケーションツールの導入が適当と判断された。何よりも取引先から信頼を獲得することが今後のビジネスの発展に欠かせない。経営トップはそう判断したのである。
そこでB社では、大阪本社と茨城にある災害対策サイトの間に、ストレージベースのデータ複製が可能なソリューションを導入することにした。このソリューションではバイト単位まで一致させるデータ複製をリアルタイムで可能な上、サーバを経由しないため、稼働中のサーバや業務アプリケーションに影響を与えないで済む。データの複製は自動で行うため、テープメディアと違い運搬・保管の手間は必要ない。取得したデータの扱いについても、テープよりははるかに容易だ。また、リアルタイムでデータを複製しているため、RPOとRTOはともに最短で済む。
こうしてプロジェクトチームは最適の災害対策を実現し、世界中の取引先やステークホルダーから高い評価を受け、B社がさらなる信頼を勝ち取ることに成功したのであった。