EMCでは次世代のデータセンター環境として、プライベート・クラウドを推進している。将来、プライベート・クラウド環境を実現するためには、データセンターの仮想化は必須だ。 また仮想化によって高い効果を得るためには、部分的な仮想化ではなく、大規模な仮想化を実施する必要がある。聖域なき仮想化を実現するためには、ストレージシステムの処理と保存の動的・柔軟な最適化とI/O経路の動的・柔軟な最適化が重要なポイントになる。ここでは仮想化環境でのI/O経路の最適化について紹介していこう。

まず、仮想環境におけるI/Oとそれを取り巻く問題について紹介しよう。Tier-1, 2レベルの仮想化が進むと、ネットワーク上で物理環境と同等の可用性、信頼性、パフォーマンスが求められるようになる。しかし、現在のところ、ネットワーク上で仮想環境にそのようなものを提供するソリューションはほとんど見当たらない。そのソリューションに求められる課題は、予測可能で一貫性のあるサービスレベルの維持ということだ。サービスレベルの維持とは、さまざまなサイズ、タイプ、アプリケーションなどのデータが混在するI/O経路の中で、ワークロードの動的な変化を監視できることを意味している。つまり、ワークロードに対してダイナミックに適応できるということが重要なのだ。監視できるだけでなく、トラフィック内のI/Oを定義して、トラフィックごとに優先度に応じたI/Oの制御することも必要だ。これは高いTierのアプリケーションに対して、帯域を保証する際に重要になる。他にも、ホスト、ネットワーク、ストレージの3つがそれぞれの利用効率を最適化しながら共存されることや、管理フレームワークの標準化・自動化なども問題点としてあげられる。こういったことが、仮想化の足かせになっているのだ。このような背景から、クラウドOSとしての機能を持った最新版のVMware vSphere 4では、新たにAPIを提供し、さまざまなエンハンスの機能を提供している。

では、現状のI/Oはどのような経路でやり取りされているのだろうか? 今までのI/O経路は図のようになっている。まず、ホストとストレージに関しては、多様な種類やサイズのI/Oを処理するために、処理待ちのI/Oをスタックしておくキューを用意している。さらにネットワークのスイッチの送受信側にはトラフィックをバックアップするためのボリュームが設けられている。これらは相互に依存しており、ネットワークリソースの最適化を図るためにはサーバからストレージにいたるまでのI/Oを監視するシステムが必要になる。一見すると、これでも十分なように感じられるが、ただ単にI/Oを分散するだけでよいわけではなく、特定のキューがあふれてしまう可能性があるため、I/Oをそのサイズや優先度に応じて処理することが重要となる。そうすることによってCPUなどのリソースを有効に利用できる。

このような状態を解消するためにvSphereのNMP(Native Multipathing Plugin)にはラウンドロビンという機能が提供されている。この機能は、I/Oリクエストの順番に合わせて、ターゲットのデバイスポートを割り当てていくものだ。ただし、割り当てられたI/Oのキューがいっぱいなのか、余裕があるのかといった情報が分からないことから、I/Oを制御する際に、品質を保証するレベルには達していない。こういったことから、Tier1の仮想化に対する不安は解消できない。

これに対して、EMCではvSphereのvStorage APIに対応したI/Oの最適化に対応するソリューションとして「PowerPath/VE」を提供している。この製品は、HBA、I/Oステータス、パス全体を監視し、I/Oステータスの変化に応じたパスを選択することができる。また、様々なロードバランシング技術により、優れたパフォーマンスを実現することが可能だ。 さらに、デバイスを監視するとともに優先度設定ができたり、空いているパス、キューへI/Oを動的に分散することができるので、CPU負荷の平準化が可能になり、Tierの高いデータに対して品質を保証することが可能となった。

では、PowerPath/VEは、どのような仕組みを使って、このような深いレベルでI/Oを制御することができるのだろうか? 元々PowerPath/VEは、物理環境用の「PowerPath Multipathing」の仮想環境版である。PowerPath Multipathing は、HBAの上に位置づけられており、さまざまなOSやアプリケーションの混在環境に対応していた。また、すべてのI/OがPowerPathを通ることで、すべてのI/Oを制御することができることも特徴のひとつだった。このアーキテクチャを仮想環境で実現したものが、PowerPath/VEだ。ESXカーネルに常駐することで、HBAの上に位置し、ゲストOSやストレージに依存しないアーキテクチャになっている。そのため、ゲストOSの上に位置づけられるアプリケーション等のすべてのI/Oをコントロールすることができる。

つぎに、VMware NMPとPowerPath/VEの違いについて紹介していこう。まず、VMware NMPは、VMwareのオリジナルな機能なので当然VMware環境にのみ対応しているが、PowerPath/VEはVMwareに加え、Hyper-Vなど他の仮想化ソフトなど異種混在環境で管理を標準化することができる。ロードバランシングに関しては、NMPがラウンドロビンにしか対応していないのに対して、PowerPath/VEはHBAやポートのステータスを監視して、空いているパスを検出する動的ロードバランシングが可能だ。これにより、パフォーマンスの最適化が可能になる。パスの制御に関しては、MNPが基本的な3つのポリシーに基づいて行われているのに対して、PowerPath/VEでは、ミッドレンジならミッドレンジ用、ハイエンドならハイエンド用といったストレージ特化型ポリシー等の8つのポリシーを用意しており、負荷の変化に応じてI/Oパスの最適化が行えるようになっている。これにより、ストレージ、ネットワーク、ホストのすべてを最適化することができる。

具体的なPowerPath/VEの利点として、ワークフローやパスの変化に対応して、動的にロードバランシングできるので、一貫したサービスレベルを維持できることがあげられる。しかも、パフォーマンスは、VMware NMPの約3倍のI/OPS、約3倍のスループットを実現しており、応答時間も1/3に短縮でき、コストの削減も可能だ。
雨堤 政昭、若松 信康
EMC ジャパン株式会社 マーケティング本部
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