病院名 : 静岡県立総合病院
開院日 : 昭和58年2月1日
所在地 : 〒420-8527 静岡市葵区北安東4丁目27番1号
職員数 : 834人(非常勤及び臨時職員160人)平成20年4月1日現在
病床数 : 720床(一般620床、結核100床)
URL : http://www.shizuoka-gh.jp/

静岡県における中核的医療施設として先進的医療に取り組むとともに、医師・薬剤師・看護師などの教育研修・臨床研究施設としての役割を担う静岡県立総合病院では、放射線画像システムのストレージ基盤にEMCのミッドレンジ・ストレージ「EMC CLARiX CX3-40」と情報インフラストラクチャ環境におけるリソース管理ソフトウェア「EMC ControlCenter(ECC)」を採用し、2008年10月から稼働開始した。複数の診療科を横断する共有ストレージ・インフラとして利用することで無駄な重複投資を回避したほか、管理ツールの有効活用により運用管理の負荷軽減を実現した。標準技術をベースに構築された今回の新システムは、ディスクやCPU、ネットワークといった個々のリソースの使用率を"見える化"し、統合管理を実現するための第一歩となる。
1983年2月に開院した静岡県立総合病院は、「信頼し安心できる質の高い全人的医療」を理念として、静岡県厚生部病院局が管理・運営する病床数720床の大規模総合病院。静岡県における中核的医療施設として先進的医療に取り組むとともに、医師・薬剤師・看護師などの教育研修/臨床研究施設としての役割を果たしているほか、「地域医療支援病院」として、"かかりつけ医"である診療所と役割分担し、質の高い医療サービスを提供するための連携(病診連携)を推進している。
これまで静岡県立総合病院では、高度医療の実現には不可欠なCT(コンピュータ断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴診断装置)、CR(デジタルX線撮影装置)など、最新の画像診断装置や放射線治療機器を導入し、2006年1月から全画像の電子保管体制を整備し運用してきたが、地域医療機関との連携を推進する同病院では、院内の診療科だけではなく、他施設からの治療・検査依頼も年間1,500件以上と非常に多い。特にこの数年は当初の予想を上回る勢いで放射線画像システムのデータ量が増加し、従来のシステムでは容量的に対応できないレベルに達しつつあった。
こうした状況に対応するため、県立総合病院では2007年6月から放射線画像システムのストレージ・システムを刷新するプロジェクトを発足させ、SAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)の導入を前提に検討を開始、公開調達仕様に基づく競争入札を経て、2008年6月に、ミッドレンジ・ストレージ「EMC CLARiX CX3-40」とSAN環境でのリソース管理タスクを合理化・自動化するストレージ管理ソフトウェア「EMC ControlCenter(ECC)」をはじめとする、EMCのストレージ・ソリューションが選定された。
CLARiX CX3-40は、放射線画像データを長期保管する"ロングターム・ストレージ(LTS)"として導入され、これによって院内の各診療科を横断する共有ストレージ基盤が構築されることになった。それまで同病院の放射線画像システムでは、30台以上のサーバでNAS(ネットワーク接続型ストレージ)やDAS(直接接続型ストレージ)などが個別に利用されていた。

医療情報室 主査 岩井 聖 氏
今回のプロジェクトを主導した医療情報室主査、岩井 聖氏は、「調達仕様書の策定にあたって、まず運用管理の負荷が軽減できること。次に、変化に柔軟に対応できることを重視しました」と語っている。また、将来にわたって活用・拡張できるストレージ基盤とするため、様々なメーカーとの幅広い相互接続性や、SMI-S(ストレージ管理イニシアティブ仕様)に基づくストレージ管理インタフェースへの対応など、標準技術をベースにしていることも重要な要件となった。
今回のシステム構築を通して岩井氏は、EMCの戦略、及び製品・ソリューションの考え方全てが標準技術をもとに設計・開発されていることや、ユーザー側の意図を十分に理解して対応するSEのスキルレベルを高く評価している。
さらに、今回の新システムでは、サーバのCPU使用率やアプリケーションの挙動を把握し、ネットワーク上のIT資源を"見える化"することで、共有化された資源として統合管理できるように統合運用管理ソフトウェアも導入された。新システムは、CLARiX CX3-40によるLTSが2008年8月末に構築を完了し、これを基盤とするアプリケーションの設定と、従来の20TB以上の画像情報の移行作業を経て、2008年10月から全システムの本格稼働を開始した。

医療情報室 室長 大石 裕章 氏
今回新たに構築された放射線画像システムの特徴について、医療情報室・室長、大石裕章氏は、「IT資源を弾力的に有効活用できるシステムです。今後は容量の増設も容易になり、必要に応じてシステムを増強できます。今回のシステム構築に導入した考え方を発展させれば、将来的にシステムを仮想化することも可能です」とし、仮想化技術などの導入による情報インフラストラクチャの全体最適化を視野に入れたシステムであることを説明している。
また岩井氏も、従来ではストレージ使用率の異なるサーバが個別に散在していた状況が、新システムでは、SANストレージを各サーバの共有資源として管理することで、各サーバが必要とするサービス・レベルに合わせてI/O性能やRAID構成、容量などを配分でき点をあげており、「ECCのリソース管理機能などを活用すれば、コストを抑えながら容量と性能を管理でき、ハードディスクの重複投資を回避できます」と語っている。
今回の放射線画像システムは、ECCや統合運用管理ソフトウェアによって、ストレージ・ディスクやサーバのCPUといったIT資源を標準化・統合管理し、最適化することで、膨らむ一方のIT投資を抑え、将来の仮想化システムへと発展させるための第一歩として位置づけられる。
静岡県立総合病院が、こうした重複投資の排除と情報インフラストラクチャの全体最適化を推進する背景には、2009年4月からの独政化への対応がある。これまで同病院は、静岡県厚生部病院局によって管理・運営されてきたが、2009年4月1日からは県立こころの医療センター、県立こども病院と共に「地方独立行政法人 静岡県立病院機構」によって運営される形態に移行する。
地方独立行政法人は、地方独立行政法人法に基づいて地方公共団体が全額出資して設立する公共性が高い組織で、県立3病院は独法化後も引き続き、県立病院として高度・特殊医療の提供や地域医療支援などの役割を果たすことになるが、それに加えて効率的な病院経営も求められる。
独法化について、静岡県立総合病院の院長、神原啓文氏は「2009年4月からの独法化に向けて、さまざまな連携を図っていくことになります。県立3病院が連携し、お互いの投資の重複を抑えつつ、高い医療レベルを維持しながら効率的に経営していく必要があります」と説明している。
現在も同病院の医療情報室は、県立3病院のITシステム関連業務を統括する組織として位置づけられているが、独法化に伴う3病院の連携強化と重複投資を回避するための施策をITシステム面から主導することになる。その一環として医療情報室では、2008年12月に3病院のネットワークを連携させ、その環境を利用するアプリケーションやメール・システムなどを2009年4月から順次導入する計画。メール・システムについては、県立総合病院のネットワークに公衆回線(インターネット)側への出口を設け、3病院で利用する。

放射線画像システムの概要図

左から/
医療情報室 主事 柴田 吉昭 氏、
医療情報室 室長 大石 裕章 氏、
静岡情報処理センター
医療システム事業部システム部
県立病院運用担当 内田 和将 氏、
医療情報室 主査 岩井 聖 氏
今後の展開として医療情報室では、ハードウェアとアプリケーションを完全に分離し、ストレージ・システムを含むITインフラを仮想化し、統合管理することも視野に入れることで、更に情報インフラストラクチャの全体最適化を図っていく。
これにより、従来からCD-ROM化して提供してきた放射線画像を、3病院間で共有利用できるようにするだけでなく、医療保険福祉サービス分野向けの公開鍵認証基盤(HPKI:HealthCare PKI)を利用して、インターネット経由で閲覧可能にするなど、地域医療支援をさらに強化できる。
岩井氏は、こうした構想は県立総合病院だけで実現できるものではないとしながら、「そのような活用が求められた場合でも、十分に対応できるだけの体制をいまから構築しようと考えています」と説明している。
大石氏は「今回の放射線画像システムはテストケースとして構築したものです。今後はこのシステムを本格稼働しながら、次の段階へ展開していくことを考えています」とし、岩井氏も「現在は情報活用のための足回りを整備した段階ですが、非常に高い自由度を持っていますので、状況を見ながら適用範囲や活用を判断することになります」と語っている。

重複投資を抑え、医療レベルを維持しながら効率化を
放射線画像システムの完全フィルムレス化は、情報が一元管理できることに大きなメリットがあります。検査・診断情報は患者の個人情報でもあるため、できるだけ人手を介さないでフィルムレスで取り扱いたいと考えています。また、医療情報は集計・分析して活用することが重要ですが、フィルムレスなら即時的な利用も可能で、デジタル情報としてさまざまに活用できます。
新しいモダリティ(医療機器)やそれを利用した診断・検査が、技術革新によって速いスピードで登場していますが、今回の新システムでは、そうした状況にも対応できる高い拡張性を備えています。
これまでも放射線画像をCD-ROMに格納して、他の医療機関や診療所などに提供してきましたが、保管や管理の問題もあるため、やはりオンラインで提供できるように検討していきたいと考えています。今後はこうした病診連携だけではなく、県立3病院を含めた病病連携も拡大していく必要があります。
大規模な診断装置や機器がすでに導入されている病院もありますが、相互の重複投資を排除して、基盤となるシステムをうまく連携できるように、高度な医療レベルを維持しながら効率化を図ることが重要だと考えています。
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