社名 : 株式会社大林組
創業 : 明治25年(1892年)1月
東京本社 : 東京都港区港南2丁目15番2号
本店 : 大阪市中央区北浜東4番33号
資本金 : 577.52億円
従業員数 : 9,280名(平成20年3月現在)
事業内容 : 国内外建設工事、地域開発・都市開発・海洋開発・環境整備・その他建設に関する事業、及びこれらに関するエンジニアリング・マネージメント・コンサルティング業務の委託、不動産事業ほか
URL : http://www.obayashi.co.jp/

大林組では、工事事務所と協力会社間の情報共有サービスとして2001年9月から運用してきた「OC-COMET(オーシー・コメット)」の刷新を契機に、EMCのデータ・レプリケーション・ソフトウェア「EMC RepliStor」を導入し、工事記録を自動アップロードで保存する仕組みを構築した。これにより同社では、工事事務所の作業負荷を軽減するとともに、業務の遂行に不可欠な情報をリアルタイムで保全できる体制を業界内で先駆けて整備した。
さらに、EMCのIPストレージ・システム「EMC Celerra」とミッドレンジ・ストレージ「EMC CLARiX CX3-40」及び「EMC Replication Manager」などEMCのストレージソフトウェアを導入し、東京-大阪間のOC-COMETシステムとデータのレプリケーション体制を構築した。これにより、確実なデータの保全という要望に対応するとともに、災害復旧体制を構築し、ITでビジネスの差別化・競争力強化を実現した。

株式会社大林組 東京本社
情報ソリューション部
電子調達ソリューション課長
森川直洋 氏
大手総合建設会社(ゼネコン)の大林組が2001年9月に運用を開始した「OC-COMET(Obayashi Corporation COMmunication Extranet Tools)」は、Web技術の台頭を背景として、工事事務所と協力会社との間の情報共有をインターネットで実現することを目的に開発されたサービスである。
その後OC-COMETは、建設業界で2000年8月から始まった契約業務の電子化に対応して電子契約機能が装備され、協力会社を含めた利用が拡大した。さらに、2002年末に工事記録を保存する機能が装備されたことで、OC-COMETは同社の業務に不可欠な情報共有の基幹インフラへと発展した。
工事記録は施工図や品質関係書類、工事写真などの工事の施工状況を記録した書類で、建物の保守・管理や次の工事の施工、営業活動などに利用されることから、建設会社にとっては重要な財産になる。それまで大林組では、紙の状態で保管された工事記録を竣工後に電子データ化しCD-ROMに保存していたが、建設業では担当工事ごとに従業員や協力会社が集合し、工事が終了するとそれぞれ次の工事事務所に異動するため、当時の工事担当者同士が協力しながら工事記録を作成して提出するのは大変な作業だった。
大林組 東京本社の情報ソリューション部電子調達ソリューション課長、森川直洋氏は、「工事記録を効率的に収集する方法を検討するなかで、OC-COMETの情報共有の仕組みを利用できるのではないかと考えました」とその経緯を説明する。

また、情報ソリューション部OC-COMETソリューション課長、五十嵐治世氏は、「最終的に電子化するのであれば、当初から工期中に工事と並行して記録を残せばよいという発想で、OC-COMETを情報の保管庫として利用することにしました」と語っている。
インターネットを利用するOC-COMETは、社内システムとは分離して運用されていたため、従来から使用してきた社内の工事記録作成システムとの連携を図る必要があったが、工事記録の保存機能を装備したことで利用者が拡大し、協力会社だけでなく発注元企業や設計事務所との情報共有ニーズも高まった。この時点でOC-COMETは開発から3年が経過しており、利用者の増加による処理速度の低下も顕在化してきたため、2005年から、OC-COMETの立ち上げに参画したメンバーを中核とするワーキング・グループでシステムの全面刷新に向けた検討を開始した。

株式会社大林組 東京本社
IT戦略企画室
建築事業ITグループ副主査
堀内英行 氏
新システムの開発にあたってユーザ・ニーズを調査したところ、社外との情報共有だけではなく、工事事務所内や支店の工事支援部門-工事事務所間の情報共有ニーズも多く望んでいることが分かった。この要望に対応し、社内の情報をいち早く吸い上げるための方法として大林組が選択したのが、"自動アップロード機能"である。また、当時はADSLを利用する工事事務所が大半を占めていたため、帯域幅が十分に確保できない環境でも、ユーザが意識することなく情報をアップロードできる仕組みが必要だった。
ワーキング・グループは、システムの現状を分析・把握し、収集したユーザ・ニーズに基づいて2005年12月に提案依頼書(RFP)を作成、ベンダー5社に提案を要請した結果、従来よりOC-COMETを保守・サポートしていた大林組の情報システム系子会社、オーク情報システムの提案を採用した。
新システムの開発は2006年4月から開始されたが、自動アップロード機能について、IT戦略企画室・建築事業ITグループ副主査、堀内英行氏は、「データをインターネットを介してサーバに自動アップロードする機能を実装するには、技術的にも非常に高度なノウハウが要求されます。当初は独自開発することを想定していましたが、セキュリティ要件なども考慮してパッケージ製品の導入を検討することになりました」という。これにより同社では、2006年9月に3社のベンダーにRFPを提示し、データのリカバリと保護機能を提供するレプリケーション・ソフトウェア「EMC RepliStor」をベースにしたEMCジャパンの提案を最終的に採用した。
選定のポイントについて堀内氏は、「自動アップロードによって帯域幅が圧迫され、アップロードが終了するまでインターネットが使用できない状況は困ります。データが途切れることなく確実にアップロードでき、なおかつ帯域幅も自由に設定できることが採用の決め手になりました」と語っている。
RepliStorは2006年11月の製品選定を経てテスト導入され、実データによる性能テストとフィールド・テストを経て2007年3月に正式導入された。
自動アップロード機能は当初、2007年5月にカットオーバーした新OC-COMETと同時に提供される計画だったが、新システムの中核機能であることや過去に実装例もなかったことから、ベースとなる製品の選定から導入までに時間を要した分だけ開発時期がずれ込み、2008年4月にリリースされた。大林組は、国内では常に1,000カ所以上の工事事務所で業務を進めているが、当面はそのうちの500工事事務所を対象に自動アップロード機能を導入する計画だ。


株式会社オーク情報システム
パートナーソリューション第二事業部
運用サービス第二部
基盤ネットワーク運用第二グループ
グループ長
中田久功 氏
当初、大林組では、自動アップロード機能で吸い上げたデータを従来から使用していたOC-COMETのストレージに直接保存する計画だったが、新OC-COMETと自動アップロード機能との連携を考慮して、新たにストレージの導入を検討することになった。検討の結果、最終的に大林組が選択したのは、高可用なエントリ・レベルのIPストレージ・システム「Celerra NS20/NS40G」とミッドレンジ・ストレージ「CLARiXlarix CX3-40」で、東京本社にはCelerra NS40GおよびCLARiXlarix CX3-40、大阪本店にはCelerra NS20を配置。また、2カ所のサイト間で整合性のあるレプリカを保持する「Celerra Replicator」、サーバを介さずにデータを高速移動する「SAN Copy」、レプリケーション管理ソフトウェア「Replication Manager」も導入し、東京-大阪間のデータ・レプリケーション体制を構築した。
森川氏は、「従来のOC-COMETでは一工事事務所あたり500MB程度の容量を想定して運用していましたが、新システムでは、データ保全などを考慮するとさらに増加することが予想されるので、ストレージには拡張性が必要でした」と語っている。ストレージの容量は、工事事務所での試行を通して試算し、工事事務所あたり約10GB、500カ所での展開を想定して6TBの容量を用意した。
2008年4月に自動アップロードのサービス開始が通知され、各事業所向けには説明会も開催した。工事事務所からの引き合いについて、登録・設定作業を担当するオーク情報システムのパートナーソリューション第二事業部運用サービス第二部基盤ネットワーク運用第二グループ・グループ長、中田久功氏は、「現在では週に3~4件、多い日は1日で3工事事務所ほどの申し込みがあります」という。自動アップロード機能は、サーバを設置している工事事務所を対象としているが、「サーバを設置していない工事事務所からも、利用したいとの声が寄せられています」(五十嵐氏)というほど反響は大きかった。堀内氏によると、計画ではまず500工事事務所での利用を目標としており、今年度中に200工事事務所を目途に導入を進める予定だ。

こうした工事事務所の要望は、データのセキュリティや保全に対する意識の高さの現われといえる。森川氏は「サーバの盗難や火災などで図面や写真、品質に関する情報が失われると、翌日から工事ができなくなる恐れがあります。このため、工事記録の保存とともにデータを保護・保全することは、工事事務所にとって業務上不可欠になっています」とし、堀内氏も「今回の自動アップロード機能は、そうした状況が発生しても事業が継続できるようにデータ保全の機能も兼ねています」と説明している。
さらに五十嵐氏は、「それに加えて、災害時を想定して東京-大阪間でデータを同期させているため、いわば"一石三鳥"のシステムといえます」という。災害対策については、従来のOC-COMETでも対応しており、東京のデータセンターが被災した場合でも、大阪でOC-COMETを起動して利用できるように、必要最小限のシステムをテープにバックアップしている。それを定期的に大阪に送付していたが、データはその対象外になっていた。今回の新システムについて堀内氏は「EMCのストレージ・ソリューションを導入することで、システムだけでなくデータも生きた状態で大阪で起動できるようになり、有事の際にも対応できるようになりました。これは非常に大きな進歩だと考えています」と評価している。また、オーク情報システムの中田氏も「データの保管について3つの要件があり、それらが1系統のストレージ・システムに集約できたことが、結果的に"一石三鳥"になりました。RepliStorを入り口としてEMCにシステムの仕組みを理解してもらっていたことが、今回のようなシステムを実現できた理由だと考えています」と語っている。