
2008 年末の金融危機に端を発した景気低迷は、世界各国のGDP(国内総生産)を縮小させた。多くの企業や組織ではコスト削減が経営課題の最優先事項として浮上し、IT 予算も縮小している。その一方で、企業が扱う情報量は増加の一途をたどり、事業を拡大・成長させるための革新を止めることはできない。こうした状況のもと、IT 部門にはIT 予算の7 割ともいわれる運用や保守の費用をいかに圧縮し、将来に向けての戦略的なIT 投資に振り分けるかが求められている。クラウド・コンピューティングはこうした課題を解決するためのインフラ利用形態として登場したが、その定義や導入のアプローチはベンダーによっても異なるため、導入を躊躇する企業も多い。今回の特集では、情報を中心とした新しいIT インフラのビジョンと、クラウド環境の構築・活用アプローチについて紹介する。
厳しい経済環境を生き抜くための新しいITインフラの構築
企業のIT支出に関する調査結果によると、現在の日本企業ではIT予算の7割以上が現状のITシステムを維持するために費やされており、収益率や業務効率を向上するためのIT投資、競合優位性を確保するための次世代システムへの投資は、予算の3割程度を占めるにすぎない。
ITシステムの運用・保守コストの増大は、これまで構築してきたITシステムが複雑化し、変更が困難になったことが大きな要因といえる。このため、サーバやストレージの統合をはじめ、ITインフラの全社最適化といった抜本的な見直しに着手し始めた企業もある。
経済状況が厳しさを増すなかで、企業の経営層や業務部門は、効率化や業務プロセス改善、事業環境の変化に対する即応性などを、ITシステムの活用によって実現することを期待し、IT部門はさらに、災害対策を含めた情報の保護とリスク管理、セキュリティ対策、内部統制を含めたコンプライアンス、消費電力の削減をはじめとするグリーン化などにも、限られた予算で対応することが求められている。
コスト削減を実現しながら、このようなIT部門とITシステムの利用部門の双方に不満が蓄積される状況を解消するには、従来とは異なる新しい発想でITインフラの構築・利用を検討する必要がある。
その有力な候補として注目されているのが、クラウド・コンピューティングだ。クラウド・コンピューティングは一般に、サーバやストレージ、ソフトウェアなどのITリソースを、購入・所有することなく必要に応じてインターネット経由でサービスとして利用するコンピューティング形態を指す。
現在では、パッケージ・ソフトウェアをサービスとして提供するSaaS(Software as a Service)やアプリケーション実行用のプラットフォームをサービスとして提供するPaaS(Platform as a Service)、仮想マシンやネットワークなどコンピュータ・システムを構築・稼働するための基盤をサービスとして提供するIaaS(Infrastructure as a Service)なども、クラウド・コンピューティングと呼ばれている。
こうしたクラウド環境への移行は、物理的なITリソースの導入コストと運用・管理コストの削減が可能になり、柔軟性や拡張性が実現されることから、現在の企業が抱える課題を解決するものとして期待されている。
一方、クラウド環境は中小企業や大企業の部門で、新規にITシステムや業務アプリケーション環境を導入する場合などに有効とされているが、これまで自社で大規模な基幹業務システムや戦略的なシステムを構築・運用してきた企業のなかには、クラウド環境のメリットを認めながらも、データの機密性やアプリケーションの特性から、サービス事業者が運営する外部のクラウド環境に移行できないとする企業も多い。
企業の基幹業務システムを外部のクラウド環境で運用することは、そのITインフラがブラックボックス化することにつながる。クラウド環境に移行したとしてもシステムの適切な管理は必要で、管理権限の喪失やユーザーの情報技術の空洞化、セキュリティ問題など、従来から提供されているアウトソーシング・サービスと同様の課題が浮上する。
EMCでは、こうした課題や問題点を解決するための新しいITインフラとして、仮想化技術を活用した次世代ITインフラ環境の構築を提唱している。
データセンターを仮想化し情報インフラと仮想インフラを融合
これまでEMCでは、情報インフラに特化した企業を標榜し、情報の保存、保護、最適化、活用を支援する一連の製品・サービスとして、ストレージ・システムをはじめインテリジェントな情報管理や自動化、セキュリティを実現するためのソフトウェア、サービスなどを提供してきたが、クラウド時代の到来を見据えて仮想インフラを第2の中核事業領域とし、ヴイエムウェアの技術を中心に効率的で使用率の高いインフラの構築を支援する。
EMCではクラウド環境を、インターネット経由でサービスとして提供されるITインフラおよびソフトウェアと定義し、ITインフラを巨大なリソース・プールとして稼働させることで、サービスへと変革することを目指している。それを実現するため、仮想インフラ領域では仮想データセンター向けのオペレーティング・システム環境、クラウド環境の連携、デスクトップ/ユーザー環境の仮想化に焦点を絞り、それぞれの領域における製品ポートフォリオとして「vSphere」「vCloud」「vClient」を提供する。


