100 年に一度といわれる経済危機で、多くの企業が新規投資の抑制を余儀なくされ、コスト削減が最優先の経営課題として浮上している。IT システムに対する投資も例外ではなく、新規開発プロジェクトの凍結やシステム更改の先送りに着手する企業も多い。システムの合理化や無駄な経費の削減は必要でも、戦略的なIT 投資を断念したり削減することは、景気が回復したときの迅速な戦略遂行や事業展開が困難になり、成長を阻害する要因にもなる。
では、現在の最優先課題であるコスト削減と、企業戦略の基盤となる柔軟な情報インフラ構築を両立することは現実的にできるのか。今回の特集では、コスト削減を実現しながら、来るべき将来に備えた情報インフラを構築するためのアプローチを紹介する。
情報インフラの全体最適化でEfficient ITを実現
企業の景況感が悪化するなか、IT投資の判断基準が従来にも増して厳しくなりつつある。これまでは成長を前提として投資回収率や投資回収年などを指標にIT投資が行なわれてきたが、世界的な不況でGDP(国内総生産)がマイナス成長に転じた現在、コスト削減に対する圧力の高まりがIT投資を圧迫し始めている。
従来から日本企業のIT投資は、複雑化したデータセンターの保守・運用といった固定的IT支出に7割以上が費やされ、新たな戦略や施策などを推進するための戦略的なIT支出が、グローバル平均よりも低いことが課題として指摘されてきたが、そうした企業では、景気低迷によって状況がさらに深刻化する可能性がある。つまり、全体のIT予算が削減される傾向にあるなかで、現在のITインフラを維持するための支出を低減しない限り、売上拡大や将来の成長につながるIT投資やサービス・レベルの向上を断念せざるを得ない状況に追い込まれかねない。
そのため現在のITには、より少ない予算でより多くのことが求められている。これは言い換えれば、コスト削減を図りながらサービス・レベルを向上させるという相反する命題に応えることを意味する。
EMCでは、この命題の解決に焦点を当て、効率的で最適化されたビジネスに貢献できるIT環境を実現するビジョンとして“EfficientIT(エフィシェントIT)”を提唱している。
Efficient ITは、コスト削減とサービス・レベルの向上を両立してこそ、ビジネスに貢献できるIT環境を実現することができ、ITガバナンスも強化できるとの考えに基づいている。その実現には、情報を中心に現在のIT環境を最適化する必要があるが、これを実現するのが情報インフラストラクチャの全体最適化アプローチである。
ITガバナンスを強化することは、セキュリティやコンプライアンスなどのリスク管理の強化だけでなく、IT投資とその効果を継続的に最適化し、IT投資のビジネスへの貢献度を高めることにつながる。これを実現するためには、“情報管理のあるべき姿”に基づいてIT資源の管理・活用方法を検討する情報中心のアプローチが必要になる。
これまで多くの企業では、業務や部門ごとの“部分最適化”が進められてきたが、その結果、インフラやアプリケーション、データの連携・相互運用が困難になり、企業全体としての整合性が失われ、戦略や事業目的とも乖離するようになった。そうした部分最適化のアプローチでは、データのバックアップや運用管理面でも問題が多発し、コスト削減やリスク管理、ガバナンスの点で十分なIT投資効果が期待できないことが明らかになっている。
現在のような厳しい経済状況下でこそ、漠然とITインフラの管理のあり方を考えるのではなく、“情報管理のあるべき姿”に基づいてIT資源の全体最適化を図るアプローチが重要であり、情報インフラストラクチャの観点からIT環境の全体最適化を図ること、すなわち最終ゴールをイメージしながら、全体俯瞰の観点からIT環境を最適化する必要がある。
EMCでは、こしたEfficient ITの考え方に基づき、実績の豊富なコンサルティング・サービスと、「仮想化」「統合・階層化」「バックアップ革新」「災害対策」「情報セキュリティ」「コンテンツ管理」「データセンター」「運用最適化」といった8つのカテゴリのソリューションによって、情報インフラストラクチャの全体最適化アプローチによるコスト削減とITガバナンス強化を支援している。
コスト削減とサービス・レベル向上を実現する「統合」と「仮想化」
企業内に分散した複数のシステムを物理的に整理・集約する“統合”は、サーバやストレージ分野で導入されてきたコスト削減方法の1つだ。複数のハードウェアをより価格性能比の高いハードウェアに集約し、物理的な台数を削減することで、ハードウェア購入費や保守費、消費電力、設置面積を削減する。ハードウェアの単純な物理的統合は、従来と同じアーキテクチャや運用環境で実施されることが多いため、適用範囲やコスト削減効果も限定的で部分最適にとどまる。これに対して仮想化による統合では、CPUやメモリ、ディスクなどのハードウェア資源をリソース・プールとして集約し、異種混在の複数システムでも論理に統合できる。サーバ統合では、1つのホストOS上で複数のゲストOSを動作可能にして、各ゲストOS上でそれぞれ個別にアプリケーションを実行できるようにしたり、ストレージ統合では複数ディスクの物理容量を単一の共有リソース・プールとして集約し、アプリケーションから必要に応じて利用できる環境を構築することで、物理容量以上のディスク容量を利用可能にする。これに加えて、データを使用頻度に応じて保存する「階層化」やデータを効率よく保存する「容量の効率化」、データ量を減量する「重複除外」を併用すれば、ストレージの利用効率が大きく向上し、ハードウェアのコスト削減だけでなく、可用性や拡張性といった運用管理面のサービス・レベル向上とコスト削減も可能になる。


